いやな予感がして目が覚めた。
いよいよ始まるぞ! 左足のふくらはぎあたりに違和感を覚える。慎重に体勢を変えないと、
足がつるぞ、と思いながら、ゆっくり横向きになる。とたんに、ふくらはぎに稲妻が走るような
感覚に襲われる。ふくらはぎは自分の意志に関係なく、抗えない力に思い切り引っ張られ、
もとあった位置から足の外側に移動していく。
思わず「痛い、痛い」と、幼子のように泣き叫ぶ。叫んでも痛みが解消するわけではないが、
この痛みを誰かにわかってもらいたくて、叫び続ける。しかし、夜中に足がつることがあっても、
誰も助けに来てくれない。
痛さを我慢しながら、起き上がる。左足の親指を引っ張ってみる。そして、親指を内側に
曲げてみる。ふくらはぎをもんでみる。少し痛みは和らいだようだ。
ふくらはぎも、もとの位置に戻った。たいてい、このような治し方をしている。
子どものころから、寝ているときに足がつることが、たまにあった。そんなときは父親が
飛んできて、足をさすってくれた。「ほら、もう治っただろ」と、言われると、魔法を
かけられたように痛みが消えていた。
足がつる原因は何か。いろいろ説があるようである。栄養不足とか、血行不良とか。
私の場合、運動のし過ぎが原因ではないか、と思っていた。たしかに、子どもころ、
足がつるときは、遠足や運動会の後が多かったように思う。しかし、大人になってからは、
逆に運動不足が原因にないかと思うようになった。
50代になって、朝も足がつることがあり、心配になってきた。足がつるのは、心臓病など
重篤な病気が隠されていることがあると聞いたからだ。
数年前、糖尿病に罹っているのが発覚した。糖尿病も足がつる原因の一つだと知った。治療
を続けるうちに、足がつる回数が減っていったが、それでも年に数回は、いまだに「痛い、
痛い」と叫び、のたうち回っている。